
3本線とトレフォイル(三つ葉)ロゴで知られる、世界的なスポーツブランド「アディダス」。スニーカー好きならずとも、誰もが一度はその製品を手に取ったことがあるのではないでしょうか。スタンスミス、スーパースターといった定番モデルは、時代を超えて世界中の人々に愛され続けています。
しかし、その輝かしい歴史の裏に、創業者兄弟の壮絶な確執があったことはあまり知られていません。実は、アディダスの誕生は、もう一つの世界的スポーツブランド「プーマ」の誕生と表裏一体の物語なのです。
この記事では、ドイツの小さな町で始まった靴工房が、いかにして世界的なブランドへと成長を遂げたのか、その波乱万丈の歴史を紐解いていきます。定番スニーカーの誕生秘話から、現代の巧みなブランド戦略、そして初心者におすすめの一足まで、約10000字のボリュームでアディダスのすべてを徹底解説します。
この記事を読めば、あなたが今履いているアディダスのスニーカーが、より一層特別な一足に感じられるはずです。
目次
- 第1章:アディダスの誕生 – 兄弟の確執が生んだ世界的ブランド
- ダスラー兄弟商会の始まり
- オリンピックでの成功とナチスの影
- 決定的な亀裂、そして「アディダス」と「プーマ」の誕生
- 第2章:アディダスの歴史 – 革新と成長の軌跡
- 「3本線」の誕生とサッカー界での躍進
- 「ベルンの奇跡」とアディダスのスパイク
- アドルフ・ダスラーの死と経営の変遷
- 存亡の危機とフランス人実業家による復活劇
- ストリートカルチャーとの融合
- 第3章:アディダスで人気のスニーカー – 時代を超えて愛される名作たち
- スタンスミス (Stan Smith) – 世界で最も売れたスニーカー
- スーパースター (Superstar) – ストリートの王様
- ガゼル (Gazelle) – サブカルチャーに愛された万能シューズ
- サンバ (Samba) – 最古の現役モデル、ファッションシーンへ
- 第4章:アディダスの人気の秘訣 – なぜ人々はアディダスに魅了されるのか
- 革新的なテクノロジーへの飽くなき探求
- 時代を超越する普遍的なデザイン
- スポーツとカルチャーの架け橋となるブランド力
- 巧みなロゴ戦略とブランディング
- 第5章:初心者におすすめのアディダススニーカー
- まず買うべき一足は?「スタンスミス」の圧倒的万能性
- ストリートファッションが好きなら「スーパースター」
- トレンドと個性を両立する「ガゼル」「サンバ」
- 履き心地を追求するなら「ウルトラブースト」
- 第6章:進化を続けるアディダス – 話題のコラボスニーカー
- ファッションの歴史を変えた「Yeezy」との協業
- ラグジュアリーとスポーツの融合(GUCCI, Balenciaga)
- 多様なカルチャーとの共鳴(Pharrell Williams, Bad Bunny)
- おわりに
第1章:アディダスの誕生 – 兄弟の確執が生んだ世界的ブランド
ダスラー兄弟商会の始まり

https://faq.adidas-group.jp/faq/show/315?category_id=2&site_domain=adidas&slide=modalより引用
アディダスの物語は、1920年、ドイツ・バイエルン州の小さな町、ヘルツォーゲンアウラハで始まります。第一次世界大戦から帰還したアドルフ・ダスラー(愛称:アディ)が、母親の洗濯室を改造して、わずか20歳で靴の製造を始めたのがその原点です。当時のドイツは敗戦による経済的な混乱の最中にあり、事業を始めるには困難な時代でした。
アドルフは、自身が熱心なアスリートであった経験から、「すべてのアスリートに最高のシューズを」という信念を持っていました。彼は、それぞれのスポーツに最適な靴を作るため、研究と改良に没頭する職人気質の人物でした。
1924年、アドルフの兄であるルドルフ・ダスラーが事業に加わります。社交的で卓越したセールスマンであったルドルフと、内向的で天才的な職人であったアドルフ。性格は正反対でしたが、二人の才能が融合し、「ダスラー兄弟商会」は順調に成長を遂げていきました。彼らは、リネン(亜麻)や廃材を利用してスポーツシューズを開発し、その品質の高さから、すぐに国内で評判となります。
オリンピックでの成功とナチスの影

ダスラー兄弟の名を世界に轟かせたのは、1936年のベルリンオリンピックでした。アドルフは、自ら開発したスパイクを手に、アメリカの短距離・走幅跳のスター選手、ジェシー・オーエンスのもとを訪れます。オーエンスは、アドルフのスパイクを履いて出場し、4つの金メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。
この出来事は、ダスラー兄弟商会のシューズの性能を世界に示す絶好の機会となりました。しかし、この栄光の裏では、ナチス・ドイツの暗い影が忍び寄っていました。アドルフとルドルフは、事業を継続するためにナチス党に入党。第二次世界大戦が始まると、ダスラー兄弟商会の工場は軍靴の生産を余儀なくされ、兄弟の関係にも不協和音が生じ始めます。
決定的な亀裂、そして「アディダス」と「プーマ」の誕生

日経ビジネスより引用 https://business.nikkei.com/atcl/plus/00003/090200031
兄弟の間にあった小さな亀裂は、戦争を経て、修復不可能なほど大きなものへと変わっていきます。その決定的な原因については諸説ありますが、最も有名なのは、連合国軍の空襲にまつわる逸話です。
防空壕に避難していたアドルフ一家のもとに、ルドルフ一家が後から入ってきました。その際、アドルフが連合国軍の爆撃機に対して言った「またあの汚い豚どもが来た」という言葉を、ルドルフは自分たち家族に向けられた侮辱だと勘違いしてしまいます。この誤解が、積もり積もった不信感を爆発させる引き金になったと言われています。
戦後、ルドルフは連合国軍に逮捕されますが、これはアドルフによる密告だと信じ込みました。兄弟の対立は決定的となり、1948年、二人は会社を完全に分割。町を流れるアウラッハ川を境に、アドルフは一方の岸に、ルドルフはもう一方の岸に、それぞれ自分の会社を設立しました。
アドルフ・ダスラーは、自身の愛称「アディ」と姓「ダスラー」を組み合わせ、「アディダス (adidas)」を設立。
一方、ルドルフ・ダスラーは、当初「ルーダ (Ruda)」という社名を考えましたが、より俊敏で力強いイメージのある「プーマ (Puma)」を新たな社名としました。

https://www.youtube.com/watch?v=Nl0iGMkxwccより引用
こうして、世界を代表する2つのスポーツブランドは、兄弟の壮絶な確執の末に、同じ町で産声を上げたのです。ヘルツォーゲンアウラハの町は、アディダス派とプーマ派に二分され、従業員同士の結婚はおろか、会話さえも許されないほどの敵対関係が長く続いたと言われています。
第2章:アディダスの歴史 – 革新と成長の軌跡
「3本線」の誕生とサッカー界での躍進

会社を設立したアドルフは、すぐに新しいブランドの象徴となるシンボルを探し始めます。彼が目を付けたのは、シューズの側面を補強するために付けられていた革のストラップでした。1949年、アドルフは、この補強のためのストラップを3本に定めます。これが、現在まで続くアディダスの象徴「スリーストライプス(3本線)」の始まりです。
元々は機能的な意味合いで付けられた3本線でしたが、アドルフはこれを商標として登録。あらゆる製品にこの3本線を施すことで、アディダスブランドの認知度を飛躍的に高めることに成功しました。
「ベルンの奇跡」とアディダスのスパイク

https://king-gear.com/articles/8より引用
アディダスの名をサッカー界で不動のものとしたのが、1954年のFIFAワールドカップ・スイス大会です。決勝戦、当時最強を誇ったハンガリー代表と、西ドイツ代表が対戦しました。試合は雨が降る悪天候の中行われましたが、西ドイツ代表はアディダスが開発した「スタッド(鋲)が交換可能なサッカースパイク」を履いていました。

https://king-gear.com/articles/8より引用
この革新的なスパイクにより、西ドイツの選手たちはぬかるんだピッチでもグリップ力を失うことなくプレーでき、大方の予想を覆して優勝を果たします。この歴史的な勝利は「ベルンの奇跡」と呼ばれ、アディダスの技術力の高さを世界中に知らしめる出来事となりました。この成功を機に、アディダスはサッカー界におけるトップブランドとしての地位を確立していきます。
アドルフ・ダスラーの死と経営の変遷

その後もアディダスは、1967年にアパレル分野に進出し、伝説的なトラックスーツ「ベッケンバウアー」を発表。1970年のFIFAワールドカップ・メキシコ大会では、初の公式試合球「テルスター」を提供するなど、事業を拡大していきます。

https://www.otsuka-design.com/logo/blog/?p=168より引用
1972年には、現在「アディダス オリジナルス」のロゴとして親しまれている「トレフォイル(三つ葉)ロゴ」が誕生。古代オリンピックで勝者に授けられた月桂冠をモチーフにしたこのロゴは、アディダスの豊かな伝統と多様性を象徴しています。
順風満帆に見えたアディダスですが、1978年に創業者アドルフ・ダスラーが亡くなると、少しずつ歯車が狂い始めます。息子のホルスト・ダスラーが後を継ぎ、スポーツマーケティングの概念を確立するなど手腕を発揮しますが、1987年に彼が急逝すると、ダスラー家による経営は終わりを告げ、会社は深刻な経営危機に陥りました。
存亡の危機とフランス人実業家による復活劇

https://number.bunshun.jp/articles/-/851077?page=2より引用
1990年代初頭、アディダスはナイキやReebokといった競合の後塵を拝し、倒産寸前の状態にまで追い込まれます。この危機的状況を救ったのが、フランス人実業家のロベール・ルイ=ドレフュスです。
1993年にCEOに就任した彼は、大胆な改革を断行。生産拠点をアジアに移してコストを削減する一方、マーケティングに巨額の投資を行い、ブランドイメージの再構築を図りました。彼は、アディダスが持つ「本物」のスポーツブランドとしての歴史と伝統を重視しつつ、それを現代的なファッションやカルチャーと結びつける戦略を取りました。
この戦略は見事に成功し、アディダスは奇跡的な復活を遂げます。1997年にはスキー用品大手のサロモンを買収(後に売却)、2006年にはリーボックを買収するなど、再びスポーツ用品業界の巨人として返り咲きました。
ストリートカルチャーとの融合

https://www.redbull.com/jp-ja/run-dmc-dante-rossより引用
アディダスの復活を語る上で欠かせないのが、ストリートカルチャーとの結びつきです。特に、1980年代にヒップホップグループのRun-D.M.C.が、シューレースを外した「スーパースター」を愛用し、「My Adidas」という曲を発表したことは象徴的な出来事でした。これは、スポーツブランドがアスリートだけでなく、ミュージシャンやアーティストといったカルチャーアイコンと結びついた最初の事例の一つであり、アディダスがストリートファッションの定番となる大きなきっかけとなりました。

↑カニエ・ウェスト(Ye)https://www.cnn.co.jp/showbiz/35178296.htmlより引用
この成功体験が、後のカニエ・ウェスト(Ye)やファレル・ウィリアムスといったアーティストとのコラボレーションへと繋がっていきます。
第3章:アディダスで人気のスニーカー – 時代を超えて愛される名作たち
アディダスの歴史は、数々の名作スニーカーの歴史でもあります。ここでは、ブランドを象徴し、今なお世界中で愛され続けている4つの定番モデルについて、その誕生の背景と魅力を深掘りします。
スタンスミス (Stan Smith) – 世界で最も売れたスニーカー

https://www.jeansmatsuya.com/SHOP/fx7519.htmlより引用
- 誕生の背景:「スタンスミス」は、1973年に誕生したとされていますが、その原型は1965年に登場した世界初のオールレザーテニスシューズ「ハイレット」です。フランス人テニスプレイヤー、ロバート・ハイレットの名を冠したこのモデルを、当時世界ナンバーワンのテニスプレイヤーであったアメリカのスタンレー・ロジャー・スミス(スタン・スミス)が愛用したことから、彼のシグネチャーモデルとしてリニューアルされました。
- デザインの特徴:最大の特徴は、アディダスの象徴である3本線を、パンチング(通気孔)で表現した点にあります。これにより、ブランドロゴを主張しすぎない、クリーンでミニマルなデザインが実現しました。また、シュータンに描かれたスタン・スミス本人の肖像画も、このシューズのアイコンとなっています。
- 人気の理由:テニスシューズとしての優れた機能性はもとより、そのシンプルで洗練されたデザインが、どんなファッションにも合わせやすいと評判を呼び、コートの外、ストリートへと人気が拡大しました。「世界で最も売れたスニーカー」としてギネスブックに認定されるなど、まさにスニーカーの歴史における金字塔と言える一足です。
スーパースター (Superstar) – ストリートの王様

https://www.jeansfactory.jp/content/feature.php?d=1741935600より引用
- 誕生の背景:1969年、当時主流だったキャンバス地のバスケットボールシューズに代わる、世界初のオールレザー製バスケットボールシューズとして誕生しました。優れた耐久性と保護機能で、NBA選手の約75%が着用するほどの人気を博しました。
- デザインの特徴:最も象徴的なディテールは、つま先を保護するラバー製の「シェルトゥ」です。この貝殻のようなデザインは、機能性だけでなく、スーパースターに唯一無二の個性を与えています。ギザギザの3本線と、ヒール部分のトレフォイルロゴも特徴です。
- 人気の理由:バスケットボールコートでの成功に加え、前述の通り、1980年代にヒップホップグループRun-D.M.C.が愛用したことで、ストリートファッションのアイコンとしての地位を確立しました。音楽やダンス、スケートボードといったカウンターカルチャーと深く結びつき、誕生から半世紀以上経った今もなお、世界中のストリートで絶大な存在感を放っています。
ガゼル (Gazelle) – サブカルチャーに愛された万能シューズ

- 誕生の背景:1966年(1968年説もあり)に、多目的なトレーニングシューズとして登場しました。当初は、インドアトレーニング用と陸上競技用の2つのモデルが存在したと言われています。
- デザインの特徴:アッパー全体を覆う上質なスエード素材と、つま先部分の「Tトゥ」と呼ばれる補強デザインが特徴です。シャープで洗練されたシルエットは、スポーツシーンだけでなく、日常のファッションにも取り入れやすい魅力を持っています。
- 人気の理由:そのスタイリッシュなデザインから、70年代にはハンドボール選手、80年代にはヒップホップのB-BOYたち、そして90年代にはイギリスのブリットポップやオアシスのリアム・ギャラガーといったミュージシャンや、スーパーモデルのケイト・モスなど、様々な時代のサブカルチャーシーンで支持されてきました。サンバと並び、近年のレトロスニーカートレンドを牽引する存在です。
サンバ (Samba) – 最古の現役モデル、ファッションシーンへ

https://mall.kinarino.jp/item-156216より引用
- 誕生の背景:1949年(1950年説もあり)に、凍ったグラウンドでも滑らないように設計されたフットボール(サッカー)シューズとして誕生しました。吸盤のような形状のアウトソールが特徴で、アディダスが現在生産しているシューズの中で、最も古い歴史を持つモデルの一つです。
- デザインの特徴:ガゼル同様、スエードのTトゥが特徴的ですが、より細身でシャープなシルエットを持っています。ガムラバーソールとのコントラストも、サンバならではのクラシックな雰囲気を醸し出しています。
- 人気の理由:元々はインドアサッカーやフットサルのシューズとして長年愛用されてきましたが、近年、そのレトロで洗練されたデザインがファッションシーンで再評価されています。海外のモデルやインフルエンサーが着用したことで人気が爆発し、現在では入手困難な状況が続くほどのトレンドアイテムとなっています。
第4章:アディダスの人気の秘訣 – なぜ人々はアディダスに魅了されるのか
創業から70年以上、アディダスはなぜ世界中の人々から愛され続けるのでしょうか。その人気の秘訣は、単に優れた製品を作っているだけではありません。そこには、ブランドとしての一貫した哲学と、時代を読む巧みな戦略が存在します。
革新的なテクノロジーへの飽くなき探求
創業者アドルフ・ダスラーの「すべてのアスリートに最高のシューズを」という信念は、現代のアディダスにも脈々と受け継がれています。その象徴が、近年開発された革新的なテクノロジーです。
- Boost(ブースト)フォーム:2013年に発表された、ミッドソール用のクッショニング素材。発泡熱可塑性ポリウレタン(E-TPU)を数千個集めて成形したもので、「衝撃吸収性」と「反発性」という相反する要素を高いレベルで両立させました。ランニングシューズに革命をもたらし、その雲の上を歩くような快適な履き心地は、スニーカーの概念を大きく変えました。
- Primeknit(プライムニット):デジタル編み技術を用いて、一枚の糸でアッパーを一体成型するテクノロジー。靴下のようなフィット感と、優れた通気性、そして軽量化を実現しました。製造工程での無駄を削減できるため、環境にも配慮した技術として注目されています。
これらのテクノロジーは、アスリートのパフォーマンスを向上させるだけでなく、日常で履くスニーカーの快適性を劇的に高め、アディダスのブランド価値をさらに押し上げています。
時代を超越する普遍的なデザイン
テクノロジーを追求する一方で、アディダスは自らが築き上げてきた歴史と伝統を何よりも大切にしています。スタンスミスやスーパースターに代表されるクラシックなモデルは、誕生から数十年が経過しても、その魅力が色褪せることがありません。
流行に左右されないシンプルで完成されたデザインは、あらゆる世代、あらゆるスタイルにマッチする「普遍性」を持っています。この普遍的なデザインこそが、アディダスが単なるスポーツ用品メーカーではなく、ライフスタイルブランドとして世界中の人々の日常に溶け込んでいる最大の理由です。
スポーツとカルチャーの架け橋となるブランド力
アディダスは、スポーツの世界で「本物」としての信頼を築き上げる一方、音楽、ファッション、アートといったカルチャーシーンにも積極的に関与してきました。Run-D.M.C.の例を筆頭に、アディダスは常に時代のカルチャーを象徴するアイコンたちと共にありました。
アスリートが着用すればパフォーマンスギアとして、ミュージシャンやアーティストが着用すれば自己表現のツールとして、その価値を柔軟に変化させるブランド力。この「スポーツとカルチャーの架け橋」となる存在であることが、アディダスのユニークな立ち位置を確立しています。
巧みなロゴ戦略とブランディング

https://ameblo.jp/three-stripes-life/entry-12914134843.htmlより引用
現在、アディダスは主に3つのロゴ(ブランドレーベル)を使い分けて、巧みなブランディングを行っています。
- アディダス パフォーマンス(3本線ロゴ):最新のテクノロジーを搭載した、アスリート向けの製品ライン。スポーツにおける「未来」を象徴します。
- アディダス オリジナルス(トレフォイルロゴ):1972年から1995年まで使用されたトレフォイルロゴを復刻し、過去の名作を現代的にアップデートしたファッション性の高い製品ライン。ブランドの「歴史と伝統」を象徴します。
- アディダス スポーツウェア(新ロゴ):パフォーマンスとライフスタイルの中間に位置し、快適性とファッション性を両立させた日常使いの製品ライン。
このようターゲットやコンセプトに応じてロゴを使い分けることで、ブランドイメージを明確化し、幅広い層の消費者にアプローチすることに成功しています。
第5章:初心者におすすめのアディダススニーカー
「アディダスのスニーカーが欲しいけど、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」。そんな方のために、数ある名作の中から、最初の一足として間違いないモデルを厳選してご紹介します。
まず買うべき一足は?「スタンスミス」の圧倒的万能性

もし一足だけ選ぶとしたら、迷わず「スタンスミス」をおすすめします。その理由は、圧倒的な「万能性」にあります。クリーンでシンプルなデザインは、カジュアルなデニムスタイルから、きれいめのジャケットスタイル、さらにはモード系の服装まで、どんなコーディネートにも自然に馴染みます。流行り廃りがなく、一足持っていれば長年にわたって活躍してくれる、まさに「スニーカーの基本」と言える存在です。
ストリートファッションが好きなら「スーパースター」

ヒップホップやスケートボードカルチャーが好きで、足元に少しボリュームと個性を出したいなら、「スーパースター」が最適です。アイコニックなシェルトゥは存在感があり、コーディネートの主役にもなってくれます。特に、定番の白黒カラーは、ストリートファッションの歴史そのものを感じさせる一足。履き込むほどに味が出てくるのも魅力です。
トレンドと個性を両立する「ガゼル」「サンバ」
今のトレンドを意識しつつ、他の人と少し差をつけたいなら、「ガゼル」や「サンバ」がおすすめです。どちらもレトロで洗練された雰囲気が魅力で、特に細身のパンツやスカートとの相性は抜群。スエード素材の上品な質感は、コーディネートを格上げしてくれます。カラーバリエーションも豊富なので、自分のスタイルに合った一足を見つける楽しみもあります。現在のファッションシーンで最も注目されているモデルと言えるでしょう。
履き心地を追求するなら「ウルトラブースト」

https://otokomaeken.com/masterpiece/266595より引用
デザイン性もさることながら、とにかく「快適な履き心地」を最優先したいという方には、「ウルトラブースト」シリーズがぴったりです。アディダスが誇るBoostフォームをミッドソールに全面採用しており、そのクッション性と反発性は一度体験すると病みつきになります。長時間の立ち仕事やウォーキングなど、日常のあらゆるシーンで足の疲れを軽減してくれます。
第6章:進化を続けるアディダス – 話題のコラボスニーカー
アディダスの魅力は、過去のアーカイブを守り続けるだけではありません。様々なジャンルのアーティストやブランドと協業する「コラボスニーカー」を通じて、常に新しい価値を創造し、進化を続けています。
ファッションの歴史を変えた「Yeezy」との協業

https://item.rakuten.co.jp/10s-clothing/cp9654/より引用
アディダスのコラボレーションを語る上で、ラッパーでありプロデューサーのカニエ・ウェスト(Ye)とのパートナーシップ「adidas Yeezy」は避けて通れません。2015年に始まったこの協業は、近年のスニーカーシーン、ひいてはファッション業界全体に最も大きな影響を与えたと言っても過言ではありません。
Yeezy Boost 350や750といったモデルは、発売されるたびに即完売となり、驚異的なプレミア価格で取引されました。その革新的なデザインと巧みなマーケティング戦略は、スニーカーを単なる履物から、投機対象となるほどのカルチャー現象へと昇華させました。契約は2022年に終了しましたが、Yeezyが残した功績は、スニーカー史に深く刻まれています。
ラグジュアリーとスポーツの融合(GUCCI, Balenciaga)

https://www.mistore.jp/shopping/feature/luxury_f2/gucciadidas_w_lx.htmlより引用
近年、アディダスはグッチやバレンシアガといった、世界最高峰のラグジュアリーブランドとのコラボレーションを次々と発表し、世界中を驚かせました。アディダスのトレフォイルロゴや3本線と、ハイブランドの伝統的なモチーフが融合したコレクションは、これまでの「スポーツミックス」の概念を根底から覆すものでした。この動きは、スポーツウェアがファッションのメインストリームにおいて、不可欠な要素であることを明確に示しています。
多様なカルチャーとの共鳴(Pharrell Williams, Bad Bunny)
アディダスは、特定のジャンルに留まらず、多様なカルチャーを代表するアーティストとのコラボレーションも積極的に行っています。
- ファレル・ウィリアムス (Humanrace):カラフルでポジティブなメッセージが込められたコレクションを展開。多様性や平等を訴える彼の哲学が反映されています。
- バッド・バニー:ラテンミュージックシーンのスーパースターとのコラボ。彼の個性的なスタイルが反映されたデザインは、発売のたびに大きな話題を呼んでいます。
- Sporty & Rich:LA発のライフスタイルブランド。ウェルネスやヴィンテージ感をテーマにした、洗練されたデザインが人気です。
これらのコラボレーションは、アディダスが常に世界のカルチャーの鼓動に耳を傾け、共鳴し続けている証と言えるでしょう。
おわりに
ドイツの小さな町の洗濯室から始まった靴工房は、創業者兄弟の確執というドラマを経て、世界中のアスリートとストリートを代表する巨大ブランドへと成長しました。
アディダスの歴史は、革新への挑戦の歴史です。アスリートのパフォーマンスを最大限に引き出すためのテクノロジーを追求し続ける一方で、スタンスミスやスーパースターのような、時代を超えて愛される普遍的なデザインを生み出してきました。
そして、スポーツの世界に深く根差し、本物としての信頼を築きながらも、音楽やファッションといったカルチャーと融合することで、常に新しい価値を創造し続けています。
この記事を通じて、アディダスというブランドの奥深い魅力に触れていただけたなら幸いです。次にあなたがアディダスのスニーカーに足を通すとき、その一足に込められた70年以上の情熱と物語を感じてみてください。きっと、いつもの景色が少しだけ違って見えるはずです。